神様の藥箋





ラルフのイヤらしくうかべられた笑みにどうこういう余裕はなく、気がつけば厩を飛び出していた。






道の途中、籐かごを腕に下げその手で洋燈を持ち、空いている手で草に触れているエレナが目に入った。




突風のように自分の前に駆け込んできたジルを見て、エレナは目を真ん丸くした。








「先生、どうかなさいましたか?」






数日ぶりにきちんと聞いた、エレナの柔らかい声。




いや、実際はラルフとの会話を耳にはしていたものの、自分がまともにこうして言葉を交わすのは本当に久しぶりだった。




それだけで、どうしてか胸が締め付けられて言葉が詰まった。

金色の豊かな髪が微かに風に揺られた。


同じ色の瞳が蝋燭の炎に浮かび上がって、なめらかに光った。





単純に綺麗だ、と思った。




金色の艶やかに流れる髪を、


その白い頬を、触れてみたい、と思った。






その華奢な体をこの腕に閉じ込めてしまいたい、と思った。









これほどの激情を、どうやって今まで抑えてきたのか、もうわからない。








視線がバチリと合うと腹の底から沸きあがった衝動がそのまま言葉となって口を突く。







「…行くな。」







「え?」







黄金の瞳が瞬いた。