己の心のうちの、核心に触れることができないまま、あっという間に日が過ぎてゆき、
とうとう、二人の出発が明日というところまで迫ってしまった。
その日の朝から無駄に早起きをして、いつもは一番最初に居間に出てくるであろうエレナを驚かせた。
食事は始終、無言を貫き通し、書物を開いても瞳は文字の上を滑っていくだけで内容が全く入らず上の空だった。
なんどか心配そうにエレナがジルの顔をのぞき込んで、なにか言いたげに口元を動かしたけれど、そのどれと言葉にはならなかった。
ちょうど、夕暮れで太陽が沈みかけた頃。
あたりは光による白っぽさを失い、空に青々とした闇が迫る時間帯になった。
ラルフがいつものように、片手にバケツを持ち、厩に向かっていく。
最後なんだ、と思う。
不思議と、寂しさは感じない。
それどころか、これから他国で活躍するであろう友を心から応援したいと思う。
清々しいくらいの胸の内。
あれほど、行って欲しくないと願っていたのに、自分の心の変化に少し驚きながらもほっとした。

