ラルフが去った後も、ジルは思考停止して固まったままだった。
ラルフとエレナが共にアストリアへ…
なぜこれほど衝撃をうけているのかわからない。
今までそれなりに患者の死を経験してきたくせに、こんなに動揺し、受け入れ難いと思ったことのない自分に、驚きと嫌悪を感じた。
なんの実感もわかないまま、
あと五日で二度と会うことのないであろう親友を見送り、唯一の助手を失うというのか。
また、ひっそりとしたこの村で、ひとり患者を診て、医術に没頭する日々が始まるのか。
…どうして、これ程寂寥の思いが胸に浮かぶのか。
俺はこんなに寂しがりやな男だったか…?
何に寂しいと感じているのか、それは認めたくない事実で、ずっと目をそらし続けていた感情だ。
この先も目を逸らし続けていれば…
五日後には間違いなく、二人はここからいなくなる。
俺はその時、どう思うのだろう。

