どうもこういうところで気が回らない。
病の兆しや、患者の異変には敏感なのに、どうもこういう所には疎いのだ。
エレナは若く美しい。
おっとり構えているように見えて、実はとんでもなく頭の切れる女だ。
特に、処方箋と薬剤の調合に関しては、『魔術師の村』と呼ばれ、数多くの薬草に造詣の深い者達が住まう、このデルク村でも、右に出るものはいないだろう。
それなのに、それを決してひけらかさず柔和な雰囲気を崩すこと無く、自分の隣にいる彼女は、どうして自分を選んだのか、今でも時々疑問に思うのだ。
もっと彼女に気をつけてやれて、あからさまに愛情表現をしてやれる男など、そこかしこにいるだろうに。

