ラルフの声が、聞こえているのに意味が呑み込めない。
エレナが、アストリアへ…?
ラルフと共に…??
ということは、彼女はこの家から出て行って…
会えなくなるという事か?
当たり前の事が馬鹿みたいに頭を駆け巡る。
彼女がいなくなるなどと、考えたことがなかった。
実家と勘当し、まるで最初からいたかのようにこの家に馴染んできたエレナが、いなくなる未来など想像すらできない。
冷静に考えてみれば、彼女はまだ若く、これ程の才能を持ち、家事を完璧にこなすのだから、いずれ良い縁が舞い込んできても何らおかしくはないのだ。
早かれ遅かれ、巡ってきたエレナの歩むであろう現実。
それなのに、こんな風に衝撃をうけるなんて、おかしな話だ。
信頼する助手の、喜ばしい出来事。
なのに、どうして俺は喜べない…?

