は………?
「なんで…そんな急に…。」
遥か異国の果て…しかも国交関係の悪化しているアストリアに。
「アストリアに、新しく後宮が建設されることになった。
全国から腕のたつ鳶職人がかき集められている。
王女様の母国であるメルクーアにも当然ながら召集令状が下ったんだよ。
とても荘厳な城になると思う。何年…いや、何十年の時間をかけなければ完成しないはずだ。
それでも、俺は職人だ。
この仕事に誇りを持っている。
王宮から直々な命令など奇跡に近いものだと思うし、これほど名誉な事はない。
俺もアストリアの地に、骨を埋める覚悟をした。
俺は再来月から、アストリアの人間になる。」
揺るぎない言葉に、ジルは何も言えなかった。
アストリアに行ってしまったら、馬の足でも一月かかる。
近いうちに、アストリアとスクロッカの治安が悪化して、絶交なんて可能性など大いにありうる。
そうなれば、再び再開することなど夢のまた夢だろう。
ラルフを目にするのは、今回の訪問が最後なのかもしれないのだ。

