バーンと豪快に閉られた扉。
後に残ったのは、ジルとエレナ。
エレナはなんとも言えない、この気まずい雰囲気に耐え難くて、可能なら今すぐに表に飛び出してしまいたかった。
「あー…その…あいつは、昔から突拍子もない事を言い出すから、戯れ言だと受け止めて…」
顔を未だに真っ赤にしているエレナを気遣ったつもりでかけた言葉だったが、エレナは肩を大きく揺らして、ジルを見た。
あれ程、熟れた林檎のようだった彼女の頬が徐々に色を失うように白くなっていく。
それと呼応するように、動揺しきっていた表情も薄れ、ゆらゆらと揺れていた緑の瞳の焦点が徐々に定まっていった。
あまりの急激な変化に、ジルはすこし驚いたが、心配になって彼女に近寄った。
「エレ…」
名前を呼びかけてはっとした。
彼女の顔は、まさしく血の気が失せていて、青白くさえあったのだ。
感情をどこかへ忘れてしまったかのように、喜怒哀楽はその顔から読み取れない。
ただ、浮かぶのは酷く暗い虚無だった。

