神様の藥箋

あぁ……



しまったな、と彼は思った。





今、二人のあいだには、子供がいない。




エレナと一緒になって数年経つが、一度も授かったことがない。

彼も医師だから、自分の体や妻の体のことはよくわかっているつもりだが、二人とも特にそういった機能の異常はない。




不妊症でないのなら、どうして…。





彼はもちろん、妻との子供を欲しがったけれど、期待しては過ぎてゆく日々の中で、







近所の子供達が表で遊ぶ姿を見ては、ため息をつき。



道で幼子とすれ違っては切なげに、その姿を目で追うのを見て。




もう頑張るのはやめようと言った。





やがて、子供の話はなるべくさけるよう、気をつけていたのだが。