神様の藥箋





何を言われたのかわからなくてぼけっとしているエレナの手を、大男は満面の笑みを保ったまま握り締めた。



「俺もいい歳だし、そろそろ嫁も欲しくなってきた。

エレナは可愛いし、気立てがいいし、俺は気に入ったぞ。どうだ、ちょっと考えてみねぇか?」





しばらくほうけたように、ラルフを凝視していたエレナだったが、次の瞬間ボンッと音を立てそうなほど一気に顔が真っ赤になった。




「い…あ……あの、私は今…けっ、結婚は…考えていないので。」



ふだんの落ち着いた物腰はどこへやら、しどろもどろになりながら必死で断りを入れるエレナ。



「俺もさすがに、今すぐにとは言わねぇよ!まあ、俺は休暇とってしばらくここにいるし。

その間、俺の事知ってもらって、それから決めてくれりゃいいからよ。」



ジルの、衝撃で真っ白になっていた頭にやっと血の巡りが押し寄せてきた。

……しばらくいるなんて、聞いていないぞ。


そう思っていても、なぜか声にならなくて。

ジルはありったけの苛立ちを込めて大男を睨んだ。




コイツといると、だんだん目つきが悪くなりそうだ。




「ラルフ……冗談がキツイぞ。」




何とか発した声に振り向いて、ラルフはきょとんとした目をジルに向けた。




「冗談じゃねぇよ。こんなタチ悪い洒落なんて、言うかよ。



さすがにこの歳になると、一人は侘しいと思うときがあるし、親もうるせぇしよ。




エレナは可愛い。ほんでよく働く。これを口説かない男は男じゃねぇよ。



意地張って、逃がした魚はデカかった、なんて嘆くバカにゃ、なりたくねぇっかんな。」





まるでジルの心のうちを、直にちくちくと刺激するような発言を次々にとばすと、ラルフはあーっと背伸びをしてドスドスと玄関に歩いてゆく。




「馬に水やるから、たらい借りるぜぇー!」