神様の藥箋




エレナの頬が、面白いくらいに真っ赤になっていく。

頬に手を当てて隠そうとしているけれど、大男は思いっきり腰をかがめて、覗きこんできた。

男にそんな近くで見つめられた事のなかったエレナは動揺して思わず半歩、後ずさってしまった。



「別に名医でもないし、彼女は奥さんじゃない。」



それを見ていると、なぜか不愉快になって彼は二人をぐいっと引きはがした。





「彼女は高級官僚の娘で、しばらく私の助手として働いてもらっているだけだ。」






「エレナと申します。お見知りおきを。」





エレナはおずおずしながらも、きちんと衣の裾を手でつまみながら優雅に礼をした。



大男は満面の笑みを浮かべて礼を受け取った。




「俺はラルフだ!ジルの数少ない友人てとこだな。」




数少ないは余計だと思いつつ、ジルはラルフを威嚇するようにジト目で見るけれど、そんな小さな攻撃は図太い神経のラルフには通じていない。




「鳶職をしてて、今は王都に近いとこに住んでる。


だから貴族の御令嬢はよく目にするが、あんたはこんな小汚い男にも丁寧に挨拶してくれるんだなぁ。」





「お褒めいただき、嬉しいです。」



ラルフの冗談が通じているのかいないのか、エレナは態度を乱すことなく淡々と言葉を返した。