神様の藥箋






本格的な冬が到来し、燦々と太陽の光が部屋に降り注いでもなお、身を震わせる寒さに耐え難くなってきた。

そんなある日の昼餉前。


ガンガンと、二度戸を叩く音がして、一週間を置いてからガンガンガンガンと連続して物凄い音が狭い室内に響いた。






あまりの荒々しさに獣の襲来かと思い、それが来客の合図だという事に、エレナはしばらく気がつかなった。





戸を叩く音が大きすぎて、聞こえていないだろうが、はい、と返事をしつつ、扉を開けた。





目の前に立っているものを目にした途端、熊だと思って思わず戸を閉めそうになった。




「おいおい、怪しいもんじゃないぜ!閉めるなよ!」



ガラガラと快活に笑う者は、熊などではなく彼女より遥かに背の高い、がっしりとした体躯の大男だった。



エレナの目線の先に大男のみぞおちがある。



顔をあげて思いっきり見上げなければ男の全容が見えない。

このデルク村に共通する華奢な体型、墨を流したような黒髪という特徴は全て当てはまっていない。



筋肉隆々の大男の髪ははっとするほど鮮明な橙色だった。




「あなたは…花の国のメルクーアの方ですか?」