神様の藥箋






涙を頬に伝わせながら、彼女が弾けるように顔を上げた。





「ここのところ、患者も増えてちょうど人手に困っていたところだった。


掃除、洗濯…まともに手が回らず、俺もこのざまだ。
世話をしてくれるならば、有難い。





薬剤の調合は、教えながらやってもらえるだろう?

きっと、すぐにひとりでもできるようになるはずだ。

貴女は、賢い娘だから。」






一度、口を止めるといい淀んでしまいそうだったので、一気に言い切った。




緊張してやや棒読みのようになってしまったが、彼女はそんなことより、言いつけられた事が信じられないのか、ぽかーんとして彼を凝視している。





「こんな賑わってもいない、田舎も田舎のど田舎だが。

食べ物も隣町で買えるし、なにより皆仲が良いから、すぐに馴染めるだろう。



この手のおかげで…」





と、照れる必要もないのに、赤くなったのがわかる頬を誤魔化すようにして自分の手を見下ろした。






「そこらの下級貴族より、金は持っている。

不自由な思いはしなくてよいから、欲しいものや、必要なものがあれば、遠慮なく言ってくれ。






……俺は装飾や洒落っけのものには疎いから、言ってくれなきゃ気づかないぞ。」




ぶっきらぼうな言葉だけれど、みるみるうちにエレナの顔が明るくほころんでいく。






「は…い。私も同じです……ありがとうございます!!!本当にありがとうございます!!!一生懸命、働きます!宜しくお願いします!」






エレナは額を擦り付けんばかりに何度もお辞儀をした。