「家とは、勘当致しました。」
いつまでもうじうじとしている、肝の小さい男に、彼女はさらりと爆弾を落とした。
「な、なんだって…?か…?」
狼狽えてろくに言葉を話せず、言語を忘れてしまった猿のように口をぱくぱくさせている彼を見て、何故か彼女は恥ずかしそうに笑っている。
「だって、お父様ったら好きでもない男と添えと言われるんですよ?
上流階級の妻などになったら、家に閉じこもりっぱなしで、夫の言う事をはいはいと聞いて。
それで人生、楽しい訳が無いじゃないですか?
だから、嫌だと言ったのです。
そうしたら、お前は高級官僚の娘としての自覚がない!わがままばかり言うようであれば、出ていけ!と。」
その光景が思い出されたのか、少しかなしげな、でも納得できないと言うように、緑の瞳をぐっと細めた。
「最初に薬学を学べといったのは、お父様なのです。
それなのに何?せっかく得た知識を、発揮せずに家に閉じこもるだなんて、宝をドブに捨てるようなものです!」
ぷりぷりとひとり怒る娘を、彼は思わず遠い目で眺めてしまった。
彼女の父は将来一家を支える妻として、家族の健康を管理しなければならないから、そう言った知識を習得してほしいと思ったに違いない。
けれど、彼女はその知識を表にどんどん活用していきたいタチなので、言い聞かせても意味が無いだろう。
だいたい、見かけに寄らず強い意思を持っていて、これ程賢い娘が、ただ家畜のように主に従う性分ではないのだ。

