神様の藥箋







彼は眉をひそめた。




果たしてそんなことを言った事があっただろうか。





身に覚えがなくて、困惑しながら彼女の白い顔を見つめていると、彼女はきょとんとした顔で首をかしげた。




「以前、野薔薇を見ていた時に先生が教えて下さいましたよ。」





野薔薇と聞いて、血のように真っ赤な花の記憶とともにその時の事が蘇ってきた。





そう、たしか彼女の地域にはない野薔薇が自生していると教えたら、すぐに彼女が食いついてきて、早速山に連れていった時のことだ。







その時は何かを教える目的で山に入った訳ではないので、彼も気を抜いていた。




野薔薇を夢見心地で見ているエレナの後ろで、彼はぼうっとその様を眺めていた。



野薔薇の赤と、アスラの赤がちょうど繋がったんだと思う。



特に深く意識せずポツリと言ったのだ。




冬になると、アスラの身を潰して衣にふりかけ、腰に鈴をつけて、獣除けにするんだよ、と。