「どうして、貴女がここにいる。」
目の前に佇む小柄な娘の存在が、未だに信じられなくて、呆然としながら寝起き後のかすれ声で問いかけると。
彼女は被っていたフードをとって、二、三度、頭を振り髪を整えてから、彼をおずおずと見上げた。
「今回は、父の言い付けで参ったのではありません。私個人の望みでここに来ました。」
艶やかな、翡翠のように透き通った緑色の髪が、冬の木枯らしに弄ばれた。
デルク村の人間である自分の黒髪とは全く違う、鮮やかな色が、いやに眩しく見えた。
みずみずしい頬は真っ白で、鼻の頭が微かに赤い。口元からほうっと白い息を吐きながら、首元の衣を抑える仕草をした。
それを見て、ようやく脳の意識が醒めた。
「とにかく、中に。」
そう声をかけると、ほんの少し不安げだった娘の表情がゆるりと和らいだ。

