そんな自分の気持ちの変化に、ひどく狼狽えた。
いい歳こいた大人が、
ずっと意地を張って独り身を貫いた男が。
人肌が恋しいなど。
まるで植物が芽吹いたように、心に根を張り、次第に大きくなっていく感情。
それら全て、書斎にこもり研究に没頭する事で紛らわせた。
お偉い役人や、官僚達がやってくる時はさすがに身なりを整えていたけれど、村人の訪問や、薬草取りに山に赴く時は、擦り切れた衣に薄汚れた半纏を羽織り、継ぎ接ぎだらけの下履きを身にまとった。
髪はパサつき、無精髭は主から管理されることなく好き勝手に伸び続けた。
そうでもして、意識を集中しないと、ふとした瞬間に、家のあちこちであの娘の陽炎を見てしまうから。
もう自分の気持ちが、執着なのか、未練なのか。
はたまた恋であるのかさえ、わからなくなっていた。
そんな、初冬のある日。

