『杏、先に行くな』
『あ、ごめん類……って、他のみんなは?』
類の声に振り返ると、案の定後ろにいた類をみて首をかしげる。
置いていった将と夏は良いとして。
さっきまで一緒にいた陽も零もいない。
類1人しかいないことを不思議に思いながら類を見ると、目があった類は何故かふっと口角を上げた。
そんな類に、一瞬胸が掴まれたような感覚に陥った。
何だろう、今のは。
こう……ずっと見ていたと言うか。
言いようのない、言葉では表せない感じの感情だった。
『お待たせしました。苺クレープです』
さっきとは違う店員さんから礼を言ってクレープを受け取る。
『……甘そうだな』
受け取った後類の隣に並ぶと、私の手の中の苺クレープを見た類がそう呟いて顔をしかめた。
何ですかその反応は。今からその甘いやつを食べる本人の前でそんな顔します? 普通。


