『将…あんた、私の名前知ってたんだね?』
『あ? 何の話だ。つか、この前も呼んだ気がするんだけど?』
うん? そんな事あったっけ?
全く記憶にございません。
『将? 俺のこと、完全に忘れてるよね』
『え……あ…』
ニッコリと笑った夏を見て、将の顔から血の気が引いていく。
仕方ない。だって、夏さん笑ってないからね。目が。
怖いよ。笑ってるの口だけだよ。
後ろに何か見える気がするのは多分私だけじゃない。
いつのものことだからか、類達は全くもって興味なさそうに先を進んでるし。
あー…将、完全に見捨てられたね?
御愁傷様でございます。
『し、将、夏! 私、類達のところ行ってくるね!』
此処は逃げるが勝ちです。
後ろで将が何やら叫んで居たけど、きっと気のせいだから気にしない。
『類!』
『……杏』
少し離れたところを歩いて居た類達に追いつくため小走りで駆け寄る。
名前を呼べば、類は立ち止まって待ってくれた。


