『……杏‼︎』


また0になる…と思い目をギュッと固く瞑った私の腕は、どこか余裕なさげな類の声と共に引かれ。



いつの間にか、海里から離れたかと思うと類に抱きしめられていた。



……ん?
ちょっと待って、これ、どういう状況なの⁉︎


海里とキスされそうになったかと思ったら、今度は類に抱きしめられて……。



駄目だ…頭がショートしそう。



海里に触れられても何も感じなかったくせに、類に触れられてる部分は異様なくらい熱い。



絶対心臓早い…こんなの、リアルで寿命縮むからね⁉︎



『……成る程。

あの類が女を手元に置いてるって噂は本当だったってわけか。


それも、中々気に入ってるんだな』



類に抱きしめられているせいで顔は見えないけど、多分何か企んでるような表情でも浮かべてるのかも。



……わっかりやすいくらい、声が感情を物語ってるから。



『……杏に近づくな、海里』



いつになく低い声でそういった類に、思わず類の制服を握りしめる。



こんな声、聞いたことない。

こんな、誰かを脅すみたいな声。





『それは無理。だって、お前のお気に入りなんだろ?』