私が返事をしなかったから、心配になったのか

階段を上って顔を出した。



「なんだ。起きてるなら、返事くらいしろよ」



彼は完全には二階には上がらず、上半身だけが見える状態で声を掛けてくる。



「あの、湊叶さん。本当に私、ここに泊まってもいいの?」

「あぁ。お袋さんにも、連絡したし問題ない……あ、俺は下で寝るし。二階には上がらないようにするから、心配ない」



あ、まただ。

さっきから、湊叶さんは私から距離を置こうとする。

決して、私に近づこうとしない。


きっと私が、彼の手を払い除けたから。

あの時、湊叶さんは心配して私に触れようとした。

けれど私は、拒絶した。


別に、拒絶したくてしたんじゃない。

好きだと自覚した瞬間、いろんな気持ちが溢れてきて

近づきたい、だけど自分を知られることが怖い。

こんな気持ち初めてで、どうしたらいいのか分からなくて……。


気が付いた時には、差し出した彼の手を払い除けていた。