ここは普段湊叶さんが使っている、二階の住居スペース。
初めて上がったけれど
店内同様、少し懐かしさを感じる和風の部屋。
湊叶さんは、物をあまり置かないタイプなのか
殺風景と言えるほどに必要最低限のものしか、この部屋には無い。
「瀬戸ー。本当に変わらなくて良かったのか?」
階段下から、湊叶さんの声。
さっき私の家に、ここに泊まることを連絡してくると
一階におりていった。
なんと彼は、携帯すら持っていないらしい。
正確には以前持っていたけれど、事情があって解約したままなんだとか。
だから、連絡手段は店の固定電話のみ。
電話にはお母さんが出たみたいで「変わるか?」と湊叶さんが聞いてきたけれど
怒られるのは目に見えていたから「いい」と言っていたのだ。
「瀬戸?寝たのか」

