目は潤んでるし、もしかして泣く?
でもなんだか、この表情って――女の……。
「~~っ。わ、私」
「な、なに?」
俺が変な想像をしていると、急に大きな声をだして立ち上がった。
「帰ります」
俺が舐めてしまった指を左手で握り
そう言ってキッチンから逃げるように走りだす。
「瀬戸っ」
彼女を引き留めようと、手を伸ばすものの
それは宙を掠めてしまう。
なんで俺、瀬戸を止めようとしたんだ?
それに止血のためとはいえ、あんな事を――。
数秒前の事を思い出し、自責の念に駆られつつ
自分の行動に戸惑ってしまう。

