中をみると、瀬戸が床にしゃがみ込み
散らばったガラス片を素手で片付けようとする姿が目に入った。
「ッ、瀬戸。素手で触るなっ」
「わっ、湊叶さん?ッ……痛ったぁ……」
俺の声に驚いたのか、瞬間的に引いた手が欠片に触れてビクッと肩を揺らす。
あ、切ったな。
言ってる傍から……世話の掛かる奴。
「バカか。素手で片付けようとする奴がいるか」
軽く溜息を吐きながら、瀬戸の隣にしゃがみ込む。
「今のは、湊叶さんの声にビックリして――」
「はいはい、いいから。手、出してみ」
彼女の右手を、少し強引に取り切り口を確認する。
人差し指の浅く切った場所から、細長い赤い血が滲んできた。
良かった。大した怪我じゃない。
ホッとして、そのまま彼女の指を自分の口に含む。
幼い頃、ばあちゃんが俺にしてくれたように――。

