「そんなに可愛いことされると、連れ去りたくなる」
腰に両手を添えられて、額をくっつけて囁く。
キスが出来そうなくらいの、至近距離にドキドキ胸が高鳴る。
「湊叶さんは、そんなことしないよ」
そういうと諦めたように小さく溜息を吐いて、私の鼻を軽くつまんだ。
「ったく、つばさには敵わないな……頑張ってこい。待ってるからな」
マフラーの両端を持ち、周りから隠すようにして
触れるだけのキスを一つ。
「ッ……ここ、バスの待合所」
周りにみんないるのに、こんなところでキスなんて――。
赤くなる顔を、マフラーに埋めて隠す。
それを見た湊叶さんは、満足そうな笑みを浮かべて「可愛い」と
また私を抱きしめた。

