足を伸ばして、港の方へ。
歩けば30分程の距離。
いい散歩道だ。
朝日に海が照らされて、キラキラと輝く。
その輝きでさえ、今までの俺は眩しくて見ないようにしていた。
俺には相応しくない世界だと――。
だけど、そんなのは気持ちの持ちようで
光は平等に降り注ぐ。
頭を上げれば、そこにある。
そんな当たり前の事を、今まで忘れていた。
朝焼けの空を仰ぎ見た。
綺麗だ――。
波が打ち寄せる音を聞きながら、深呼吸をする。
「湊叶?」
不意に呼ばれた名前に、ドキッと心臓が音をたてる。
恐る恐る後ろを振り返ると、そこには会いたくないけれど
話し合わなければいけない人が立っていた。

