知恵は、病院からそのまま職場へ向かった。

知恵は、結婚式場の営業の仕事をしている。

都心から離れた場所にある結婚式場に勤めている。

知恵は、勤めて十年もなるベテランである。

主にカウンターでの接客が多いが、結婚式のシーズンで忙しくなると、少ないスタッフで運営しているため、披露宴会場の設営で重いテーブルを運ぶことや、時には披露宴の中で料理を運ぶ配膳の仕事などもする。

知恵は、この職場の仕事が好きだった。結婚する二人の幸せな表情を見ていると、仕事の充実感を感じる。
肉体労働や雑用的な仕事をしても、二人のための結婚式を作りあげているという実感があった。
それに、披露宴を終えた二人からの感謝の言葉をもらう時が、仕事の達成感を感じるからである。

知恵は、社員用の休憩室で携帯電話を取り出した。

大輔に妊娠のことを伝えようとしたが、なかなかつながらなかった。