「えっ! リーコルって?」
上司の高島が企画開発のオフイスに入ってくるなり、大輔のデスクにやってきた。

大輔は、自動車会社に勤めるエンジニアだった。

「俺たちが制作した、ブレーキ部分に欠陥が見つかった」
高島が厳しい表情で言った。

「欠陥って、どこが?」
大輔が机から立ちあがり、高島に尋ねた。

「今朝、営業部の連中がやってきて、ブレーキの一部に欠陥があったらしく、それが原因で事故が起きたらしい」

「事故って・・・それで乗っていた人は?」
大輔が心配して高島に尋ねた。

「幸いにも軽傷だったが、走行中にブレーキの効きが悪くなったのが原因らしい」
「でも、どうして、そんなことに?」

「松井、今から自分はその事故になった方の病院まで行って謝罪をしてくる」
「わかりました。お願いします」

「それで、あとのことは頼んだぞ」

高島が病院に向かった後、大輔のオフイスは慌しく忙しくなった。
大輔も欠陥原因を追究するために走りまわった。