トントン
肩を叩かれて振り返ると、優しい笑顔の康紀さんが立っていた。
「久しぶり♪」
「あ…お久しぶりです。」
「桜ちゃんぼーっとして気づいてくれないから、しばらく黙って見てたよ?」
「えっ?…見てたとか…。」
「なんか顔がにやけてた。」
「うそっ!それ…最悪じゃないですか…。」
「冗談だってば!」
そう言うと、こらえきれない風に笑い始めた康紀さん。
私は、恥ずかしくなってうつむいた。
「下向くなよ~~。俺が意地悪したみたいじゃん。さ、いこっか。」
「あ…はい…。」
歩き始めた康紀さんの後ろをちょこちょこと歩く私。
男の人の歩く速さにちょっとだけ驚いたけど、一生懸命離れないようにって早足になった。
土曜日の午後、思い思いの時間を過ごそうとする人たちで街はごった返していた。
康紀さんは交差点で立ち止まって、不意に私を見て
「なんか危なっかしいな。」
そう言って笑うと、私のコートの袖を握った。
嬉しいような、ちょっぴり子供扱いされて悲しいような複雑な気分で袖を握る康紀さんの手を見つめる。そんな気持ちが顔に出てしまってたのか
「あ、ごめんな。俺歩くの早いらしくて…。このままだと桜ちゃんのこと置いて行っちゃいそうだから。」
そんな風に、優しくフォローしてくれた。
やっぱり…康紀さんは大人なんだ…。私にはわからないような気配りがさらっとできる。
たった5歳、されど5歳。
信号が青に変わって歩き始めた時、ほんの少し康紀さんの歩くスピードがゆっくりになっていた。

