大也とは目を合わせず、自分の出すことができると思われる最も低く感じ悪い声を出した。


「何か用?黒須くん」

「今日転校してきたばかりだからさっ。いろいろ教えて欲しいんだけど……」


二人の周りがザワザワするのが感じ取れる。

無理もない。

美少女のねおんと男前の大也が、会話をしているのだ。
何も知らない人から見れば、どこからどう見てもお似合いカップルだろう。


「私がそんなことする必要ないでしょ……。わざわざ私に頼まなくたってクラスの女子だったら誰でも良くしてくれると思うけど……」


ねおんはそっけなく断った。


しかし大也はそんなそっけないねおんの言葉にも笑顔を崩さなかった。

「だって担任だって言ってたでしょ……。それに、他の女の子達と話してたら口が滑っちゃうかもしれないんだけど……例えば、白羽さんの秘密とかね……」

「はっ……!!?ちょっと何言ってんの」


それまでずっと下を向いていて大也を見ていなかったねおんは、ここで初めて顔を上げた。

クラスの女子達を悩殺した大也の笑顔がすぐそこにあった。
クラスの女子達は魅了できてもねおんには絶対零度の笑みとも思えるほど恐ろしい。