放課後。

朝のHRのことで、美子に何度か大也を紹介してくれやら、他の女子達にも絡まれたものの、なんとか切り抜けた。

ねおんはそそくさと帰ろうと、鞄に急いで教科書やらなんやらを積めていると、誰かがこちらに近付いてくる気配がした。
顔は上げないようにして、目だけ動かして見上げる。


そこに立っていたのは、黒須大也。

黒髪が不規則にはねている。目鼻立ちもくっきりしていて、吸い込まれそうな大きな瞳は曇ることなくねおんに落とされている。



視線が交錯する。
しばしの沈黙が二人の間に漂った。


先に沈黙を破ったのは大也だった。

「ねおん……お前にちょっと聞きたいことあるんだけど」

ねおんは無視して帰ろうかと思った。
しかしそうしてしまうと、明日からクラスの女子皆を敵に回してしまうに違いない。
もうすでに大也はクラスの人気者となってしまっていたからだ。今までクラスの王子様的存在だった里谷陵とも、すっかり仲良くなってしまっている。


ここは、大也との会話を手短に終わらせて、ささっと帰るのが一番だわ。

ねおんは頭を回転させて一瞬で考えた。