奏side


「桃っち寝たー?」


「寝たよ、ぐっすり」


俺の膝の上で眠るのは、
安心しきった顔の野々宮 桃羽。


俺の想い人。


「桃羽は覚えてないの?」


望月が俺に問いかけてくる。


「桃っち僕のことも覚えてないからなぁ」


まぁ一瞬だし当たり前か、と苦笑いをこぼす瑠羽。


そうか、あの時瑠羽もいたな。


「あん時ほんま大変やったのに…奏をこんな優男にしたん桃羽やでー?」


「本人覚えてねーとかショックだわー」


…まぁ、覚えてなくても仕方ないか。


瑠羽がここに住み始めたのと同じ時期だっけ。


「…流れる星のように輝いて、見た人が少しでも幸せになれる、そんな存在になればいい」


いつかの少女が俺に言った言葉。


「…僕、桃っちと学校行こうかなー」


たしか…俺と秋良、瑠羽と桃は同じ学校だったな。


「勉強また教えてあげるよ」


「奏っちほんと?なら教わろー!」


瑠羽は意外と賢いからね。意外と。


「つーかなんでいきなり学校行く言うたんや」


「桃っち守るために決まってんじゃーん」


…そうだな。


「まぁとりあえずお前たち、羽澟とその姫を…」


桃を守るために。


「全力で調べあげろ、総長命令だ」


俺の言葉に全員が声を揃えて了解と言う。


…今度は守るよ桃。


奏side終