甘い彼。

「そろそろ帰るー?」


観覧車を降りてブラブラしていると、
瑠羽ちゃんからの一言。


「そうだね、ご飯を食べて帰るとしようか」


遊園地を出てレストランへ向かう。


…待って、ここ。


「高級レストラン!?」


「何言ってんの桃っち〜」


「こんくらい普通やろ」


「よっしゃいっぱい食うかー!」


「兄さん持ちだけど」


え、この人達怖いよ。


「俺の家がもともと金持ちだからね、望月もお小遣い貰ってて持ってるものは持ってる」


さらりと奏さんが爆弾発言。


いや、家の規模とかから薄々気付いてたけど!


それでもこの人数全員分の食事代を出せるものなの!?


しかも高級レストラン!


私こんなところ入ったことない…。


「ほら桃、ごちゃごちゃ考えてないで入ろう?」


いつぞやの言葉を言って手を差し延べる奏さん。


奏さんの前では何をされても純粋に楽しまないと。


楽しい思い出を作れるのに損しちゃう。


はい!と返事をして奏さんの手を握る。


ドク…ドク…と、高鳴る鼓動に気付かないフリをして、

レストランの中に入る。


ドク…ドク…。


この鼓動の意味を知ってしまったら。


きっと私は―――。