印堂 丈一郎の不可解な生活

ようやく辿り着いた骨董品屋。

目立たない店構えで、知る人ぞ知るって感じの建物だ。

もう閉店して、軒先は真っ暗。

入り口の扉を開き。

「貴遊、貴遊!」

お爺ちゃんの声が店内に響いた。

その声に、二階から階段を下りてきたのが。

「お爺ちゃん?」

辻本 貴遊。

つまり私だった。

お爺ちゃんに担ぎ込まれてここにやってきた男。

路地裏に存在する骨董品屋を営んでいる私の家に。

男は、酷い怪我を負っていた。

あちこちから血が出てるし、息だって絶え絶えだ。

でも、その傷を癒す事じゃなく、呼吸を整える事じゃなく。

まず最初にお爺ちゃんに言った言葉。

「お、俺に調息法を教えてくれよっ、爺さんっ!」

その一言で、私は悟ったんだ。

ああ、彼も…印堂 丈一郎もまた、『こちら側』に足を踏み入れてしまったんだなって…。