「早く…早く逃げろっっっっ!」

咢に続いて、雪城も叫ぶ。

「コイツはっ…黒十字 邪悪は最悪だ!現時点で俺達に倒す術はないっ!」

「言われなくてもよぉおぉお」

丈一郎は素早く私を抱き上げた。

「とっとと逃げてやるぜぇぇぇぇ!そんかわりオメェら、死ぬんじゃねぇぞぉおぉぉっ!オメェら身代わりにして生き延びたとあっちゃあ、寝覚めが悪ィからよぉおおおっ」

そんな事を言いつつ、丈一郎は脇目もふらずに走る。

仲間を見捨てて逃走する丈一郎。

一見すると最低の行為のように思える。

けど。

「逃がすと思ったか」

丈一郎には分かっていた。

私を連れて逃げる事で、サーは必ず追いかけてくると。

彼は咢や雪城を救う為に、わざと私を連れて逃げたんだ。