花言葉

「千絵ー、帰ろう」


「うん、じゃあね、有紗」


「バイバイ」


私と岡本くんは自転車を手で引きながら、田んぼだらけの帰り道を歩いた。


少し、風が強くてスカートと靴下の間の素足が少し肌寒い。


岡本くんも寒そうに、ブレザーのポケットに手をいれている。


私たちは、付き合って1ヶ月くらい経つけど手も繋いでない。


そもそも、世の高校生カップルは交際1ヶ月というのはどの程度まで進んでいるのか。


それも、私が不安になる原因の一つかもしれない。


「千絵ー」


「ん?」


「千絵」


「何?」


「もう、1ヶ月だね」


「そうだね」


「ごめんね」


岡本くんの口から出た謝罪の言葉にドキッとした。


別れ話されるのだ、と思ったからだ。


私は平常心を保っているような口振りで、何が?と聞き返した。


「俺、部活とか忙しいから。あんまり、デートとか出来ないでしょ?」


「大丈夫だよ、気にしなくても。部活なんだから仕方ないし。それに、学校とかでも話せるし」


私がそう言ってから岡本くんは少し黙ってしまった。


その沈黙が怖かった。


何か、間違えてしまったのか、そう思った。