花言葉

「いないよ」

「ふーん、そうなんだ。女子は優翔みたいなのが好きなのかと思ってた」

“女子は優翔みたいなのが好き”
菅原くんは、特に気にしないで言ったのかもしれない。
でも、“女子は”とひとくくりにされたのが腹立たしかった。

私は、優翔を顔で好きになったんじゃない。

“ぼくはずっと、のぞみちゃんのそばにいるよ”

そんな8年も前の口約束をバカみたいに信じてた。

ずっと、好きだったんだ。


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今日はいつもよりも少し早く家を出た。そのせいか、学校はすごく静かで、人があまりいなかった。

教室に入っていくと、中には優翔がひとりいた。

私は優翔を一瞥してから自分の席に座った。

ほんの少し、目が合った。

「藤田サン」

誰かが私を呼んだ。誰か、いや、分かってる。この教室には、私と君しかいない。

私はほんの少し首を後ろにまわした。

「ねぇ、数学の宿題やった?」

「やりましたけど」

「見せてよ。今日15日だから当たるんだよね」

優翔はこっちに向かって歩いてくる。

そして、私の手からノートを取って席に戻っていった。