花言葉

「白鳥先輩、やめてください」


岸本は、教室の外でこの会話をずっと聞いていた。


「はぁ?誰?」


「やめてください」


「岡本先輩を落とそうが、落とさまいが先輩の自由です。でも!愁先輩を巻き込まないでください」


「あなた、及川くんのことが好きなの?でも、残念ね。及川くんは沢村千絵のことが好きなの」


その言葉に岸本は怯まなかった。


「そんなこと、百も承知です」


「好きな人に好きな人がいても好きなんです!どれだけ報われない恋だろうがなんだろうが、そんな簡単に諦められるわけないじゃないですか!愁先輩だってそうです」


いつか、廊下で話したときのことが思い出される。


『先輩に好きな人がいても、先輩が好きです』


岸本、お前はすごいよ。


俺は、そんな風になれなかった。


卑屈にしかなれなかった。


「そんな気持ちを利用するなんて、最低です!愁先輩を、これ以上、傷つけないで!!」


白鳥月子は何も言わずに教室を出ていった。

教室には、俺と岸本が残された。