elevator_girl

「手伝うわ」と、諒子は
クワイア・コーラスの制服を腕に掛け
その腕にスカーレットのベレー帽を
ちょこん、と載せて。

運ばれてきた、軽音の楽器箱に手を掛けようとする。


「あ、ちょっと、諒子さん?」深町が声を掛けた。

なに?と諒子が顔を上げたところ、
深町は両手の親指と人差し指で
カンバスの囲いを模して。

画家のように、フレームの中に諒子を収めた。

「そのまま、そのまま」と、深町はすこし後ずさりして
フレームを持ったまま。
ポケットからコンパクト・カメラを取り出すと
メカニカルなアクションを伴って

小気味良いサウンドで、シャッターが下りる。

諒子が微笑む暇もなかったわ、と言うと

「そこがいいんです、自然な表情が取れて」と
深町は、レンズ蓋が垂れ下がった
銀色の金属塊を、いとおしげに撫でた。

あ、それじゃ、ベレー被ってみてください、と
深町が言うと、素直に諒子は従う。
そこの池のところに、そう、そんな感じ、と

深町はカメラマンのようにフットワーク軽く、
スカーレット・ベレーを被った諒子越しに
丘から見下ろす街並みを撮った。

次いで、背景をピントから外して