elevator_girl

なんだか、深町は不思議な気持ちになった。
別に、朋恵の事を今でも思っている訳ではない。
残像を追っている訳でもない。

でも、何故、偶然がここまで一致するのだろう?と
運命の悪戯に心を痛めた。

また、同じような運命が、彼を通り過ぎて行くのだろうか......?

深町のその視線に、仄かな慕情を感じたのか
諒子は、すこし俯き目を伏せた。
長い髪が、彼女の頬を隠す。

深町は既視感に陥る。

...こんなことがあったような気がする。

無論それは、錯覚である。
かつての類似体験を、思い出しているのだ。
だが、ディティルだけを覚えているので
初めて体験する現在を、過去に起きたことと
混同しているだけのこと、だ。

傍観していた松之は、「さあ、それじゃそろそろ...。」
と、図書館に行きましょうか、と。

松之自身も名残惜しかったが....。
図書館の開館時間にも限りがあり、そしてまた
図書館吏がずっと待っていてくれそうだったので
それに松之が配慮した、と言う訳だ。

松之は、フルートを深町に渡す。

うん、片づけとく。と深町が微笑んでそう言うと