elevator_girl

そんなのも、セッションを重ねた友達同士の、以心伝心。
音楽ってコトバの融通無碍なところ。

クワイア・コーラスのみんなは、R&Bフレーズを展開してリピート。

リード・ヴォーカルの諒子だけはアドリブで、ロング・トーンを入れる。

1コーラス伸びた、一千一秒物語、は
綺麗にエコーを伴って、消えた。


ふっ、と、音楽のマジックが終わる瞬間。

みんな、音と心がひとつになって。


秒の静寂。エンディング。


風が吹きぬけ、銀杏の木がさわさわと揺れるのが聞こえる。
それすら音楽のように聞こえた。


バンドのみんなは、一斉に歓声。

それぞれに、楽しげな声をあげて。

オーディエンスになっていた人たちの、拍手。


素敵な瞬間。


スカーレットのベレーを取った諒子は、すこし上気して。
頬が桜色に染まり、瞳を潤ませて。

松之は傍らでそれを見ていて、とても柔らかな気持ちになった。


.....こんな気持ち、今、だったら言えるかもしれない。

ある決意を秘め、フルートを下ろして諒子に近づこうとする。


だが、クワイア・コーラスの子たちが諒子に駈け寄り
今度のコンクールに、ご一緒しましょう!なんて話し始めたので
松之は、好機を逸した。


もちろん、好機、とは松之がそう思っていただけ、のことなのだけど...。