elevator_girl


夏名自身、深町と松之を特別視している訳ではない。
ただ、それまで三人だった輪の中に
一人増える、と言う状況に
どことなく違和感を感じたのであろう。

特に、松之も深町も拘り無く
夏名の事を可愛がっていたから
そういう環境に愛着を覚える事も、自然な事だ。

そう言う意味でも諒子への視線であり、
夏名自身も、嫌悪している訳では勿論無かった。
むしろ、不思議にナチュラルなその佇まいに
磁力のような訴求力を感じ取っており
それ故の感覚、だったのだろう。

すこし間をおいて、夏名はいつもの笑顔を取り戻すように努力した。
それは、ぎこちなかったが
とりあえずは平準な感じに、戻れた。


深町が話す。
「あ、ところで諒子さん、今日はどうして?」


「はい、あの..図書館に来てみたかったので。」
と、率直に諒子が話す。

松之は好機を得た、とばかりに
「はい、ここの図書館、なかなかなんです。
資料も蔵書も。文学書も結構あるんですよ。
雰囲気の良いのも...そう、稲垣足穂とか。」


深町は「タルホ?」なんか、大女優みたいな...あれはガルポか。」
とぼけた事を言うので、諒子はくすくすと笑う。

その、シークエンスを傍観しながら、夏名は

......なんか、自然。


と、奇妙に感銘を受けていた。