諒子は、にっこりと笑って。
「ハイ、少しびっくりしたわ。でも....。オートバイって自由でいいわね。
風みたいで。....私は、乗れないけれど。小説か何かのイメージなの?」
松之は、助け舟を出された事に気付く。
そう言えば、松之が恥をかかずに済むだろう、と云う思いやり。
その思いを、とてもありがたく感じた。
だから、その助け舟に乗った。
「すみません...勝手に。」
贖罪の思いと、恥かしさから頭を下げた。
諒子はかぶりを振る。
さらりと長い髪が、五月の風に揺れる。
「文才があるって、素敵ね。」
いいえ、文才だなんて、と松之はまた、恥かしさで
顔が火照ってしまう。その顔を見られたくない、
そんな思いで、すこし視線を逸らし、銀杏の葉を見上げた。
若葉から、盛緑へと。
爽やかな芳香を送ってくれる銀杏の葉が、とても有り難く思えた。
ここで、こうしているだけで....。
松之は、とても幸せだ。
「あれ!りょーこさーん!!」
遠くから、深町の、すこし高めの声が響く。
ジーンズにコットン・シャツ、ジーンズ・ジャケット。
いつもの彼の姿が、なんだかすがすがしく見えた。



