理工学棟の方から、女子学生が数人降りてきた。
ぱらぱらと、華やかな笑い声。
.......。
普段なら、騒々しいとは思わない。
でも、今日はちょっと気持ちがささくれ立っていたので
思わず、その声の方向へと松之は視線を送る....。
松之の視線の彼方には
ごくありふれた、日常の風景がある。
いつも、見なれている....。
視線を逸らし、俯こうとして....ふと。
気付く。
その、女子学生のひとりが
松之に軽く会釈をしている。
!☆。
「こんにちは。」と、その声は
あの時、睡蓮の蕾みが開くように思えた、その声だった。
松之は、あまりの事に陶然となった。
「......。」なんて言っていいのだろう。言葉にならない。でも、何か、言わなくては.....。
諒子は、女子学生たちに礼を言い、ゆっくりとこちらへ歩いてきた。
「柳さん、紹介状をありがとうございます。」と、それだけ言って。
同じく、銀杏の木の下に....。
さわ、さわ.....。
5月の風に、梢は揺れる。
それは、爽やかなハーモニィ。
松之は、はた、と気付く。
「あ、あの....済みません。ヘンなものを送ってしまって。
あれは、その.....。」
早口で、焦りながら。



