大きな声でシュウが叫ぶので、夏名はすこし恥ずかしそうにしていたが、空を仰いで...
「.....キレイ。」と、にっこり。
ゆっくりと、空をみながら深町のそばに。
深町も、にっこりと笑顔で夏名を見、
「ゴメンな、カナちゃん。」
夏名は、にっこりとかぶりを振りながら...いいえ、いいんです.....と。つぶやくように。
松之は、その様子を見ていて、なんとなく安堵する。
特に理由は無いが、なんとなく、だ。
それからすこし、3人で空を眺めていて
あ、いけない、講義があったんだ、と夏名がパタパタと
階段を駆け下りて行くのを
松之と深町は、微笑ましく見送った。
「かわいいな、カナちゃんって」と、深町が言うのを聞き
松之は、なんとなく...聞いてみたくなった。
「シュウは誰にでもすぐそう言うよね」と。
深町は、意外だな、と言う顔をして
「いや、誰でもって事はないけどな...誰の事?」
「ほら、昨日の」と、松之が言いにくそうに言うと
深町は合点を得た、とばかりにニヤニヤして
「ああ、リョーコさん?」と
松之は、親友がその名前を事も無げに言うので
どっきりとした。
その名前を聞くだけで。
「ああ....」と、丘の下の街を見下ろしながら
「この街のどこかに、暮らしてるんだろうな。
何をしてるんだろうな、今頃」と、松之はふと
親友に心の内を告げる。
深町は、ナイーヴな心中を察し
「そうだな。」とだけ返して、一緒に街を眺めた。
さっきまで見えていた虹は、風がわたると淡く
その色彩を空中に散らしていった。
まるで、昇華するように。
消えていく様を、松之はせつない気持ちで見送る....



