elevator_girl


忸怩たる思いで、深町はフィアット500を走らせた。

富士川橋のトラスを渡り、東へと向かう。

工場の多いこの町を、ゆっくりと進み
第一国道には戻らず、バスの通っている旧街道を
かみしめるように走った。

..たまには、メランコリックな気分になるのもいいだろう。
いつか、こうしてる日々も思い出になるんだろう....。



その1時間後、深町は叔父の家に到達。
その家は、丘の上、坂道に建っている。
広い裏通りに面しているが、車の通りはほとんどない。
深町が、フィアット500のエンジンを止めると
対面の家のフェンスから、人なつこい犬が、鼻を出していた。
深町に笑みがこぼれる。もともと、犬は大好きだった。

エンジンを止め、軽いドアを開いて降りる。
犬は、鼻を出して尾を振っていた。

深町は楽しくなって、犬の鼻先を撫でてやる。
犬は、嬉しそうに深町の手を舐めたので
深町も、犬の首筋を撫でてやり、戯ゃれた。

...すこし気分が軽くなった。

犬に、ありがと、と心の中でつぶやくと
犬は返事をするかのように、吠えた。