諒子は、振り向きながら微笑み....
ぐらり。
あしもとを踏み外す。
.....危ない!
松之が叫び、深町は反射的に飛び出し、諒子を抱き抱え
自分は背から、屋上のコンクリートに落下した。
不思議と痛みは感じなかった。
柔道の心得がある深町は、反射的に受け身を取って
ダメージの少ない転び方をしたのだった。
諒子の温もりに気付く。
反射的にきつく抱きしめてしまった。思いの他華奢な体は
確かに鼓動を続けていた。
ムスクの香水につつまれた諒子のかほり・fragranceが
深町の中のなにか、を、その時壊した。
.......この人は、「花」なんかじゃない!
深町自身にしか分からない、その「花」と言う暗喩に
抑制していた思いが、解き放たれるかのようだった。



