elevator_girl




桜井家の前まで、小さなフィアット500は悠々と入る。
電話しておいたので、諒子はエントランスに出て待っていた。
「いらっしゃいませ。」
柔和に微笑む諒子を見、松之は心がとろけるような思いだった。
深町は、にこにこと。
「こんばんは。....わぁ、綺麗に短冊。笹飾り!あ、お願い事は....。」

だめー、と、少女のように両手を広げて立ちはだかる諒子に、深町も松之も楽しそうに笑った。


「今年も曇りで残念。」と言う諒子に、深町はにっこりと。

「乗って下さい。すぐそこに、天の川が見られる場所が。」


フィアット500は、3人も乗るとすこし苦しそう。
開け放たれた窓と、キャンバス・トップから
夜風が流れ込み、爽やか。


区役所通りを東へ。南北大通りを北へ。
蓮池のカーブを過ぎ、ハイ・ウェイのガードを越えて...

「おい、シュウ。どこ行くんだよ。」


「まかせておきなって。」深町は楽しそうだ。