その音を聞きながら、深町は、カスケーズの「悲しき雨音」の
Pi-ta-pa-ta-....と言うアメリカンな雨音の表現と、メロディ、それを思った。
今の湯瀬さんだったら、こんなメロディを歌うんだろうな、と思い
ジョン・デヴィッド・サウザーの「ユア・オンリー・ロンリー」と
カスケーズの「悲しき雨音」をイメージしたメロディ・ハーモニーを
心に記した。
こうして、思い出がひとつづつ積み重なっていくけれど
僕はこうして、それを記憶していく。
音と言葉は風化しない。いつまでも、そのままだ...。と
ひとりごとのように言葉を紡ぎながら。
深町の手元には、可愛らしいラッピングと
温もりだけが残った。
なんだか、食べてしまうのが勿体無いくらいの愛らしさ。
それを眺めていると、昌子が出ていったドアから
軽音サークルの連中が何人か入ってきたので、
深町は、ラッピングを、大学生協の無地の紙袋に入れ
無造作を装い、部屋からでた。



