「あの、これ....。」と昌子は
コットンの袋から、可愛らしくラッピングされた包みを取り出した。
「なに?これ......。」深町は、ちょっと分からなかった。
昌子は、俯き加減に視線を床に逸らし「あの...おにぎり。作ったんです。
もしよかったら...。」恥ずかしそうに、それでも微笑みながら。
ぎこちなく言葉をつないだ。
深町は、どぎまぎとして言葉がぎこちなくなった。
「僕に...?ありがとう...。」普段は、自称は「俺」だが。
こんな時は僕、と言ってしまったりする。
もともと、深町は優しい性格だから、ずっと「僕」だった。
ハイティーンの頃から、自負心から「俺」と言うようになっていたけれど
こんな時は素が出てしまう...。
昌子は、「ありがとう」と言われて嬉しかったのか
にこにこと、子供のようにあどけなく笑い、しかし俯いたまま
「.....いつも、中庭でお昼、お菓子しか食べてないから...深町さん。
おなか、空くだろうと思って..作ってきたの。」
深町は驚いて、そして、この子の優しさがとてもありがたく思えた。
自分の知らない所から、自分をちゃんと気遣ってくれる人がいる。
両手で受け取った、かわいいラッピングのお弁当、その重みを受け止めた。



