ゆっくり、ゆっくりと昇ってきた旧式なエレベータ。
モーターの唸りが聞こえ、ゴンドラの揺れが感じられるこの旧式エレベータが、松之は好きだ、と思う。
諒子にそれを告げると、そうですね、温もりを感じます、と。
そのナチュラルな感じがとても好ましい、と....
機械チャイムが鳴動し、エレベータ・ゴンドラが屋上に到着。
電磁石が、唐突にドアを開ける。
この素っ気なさも機械っぽくていい、と松之は思う。
大きな機械に包まれているような安堵感があるな、と....。
やや慌てて、諒子はエレベータに乗り込み....。
R、を何度も押そうとする。
だが....フェイル・セーフが効いているので電磁石ブザーが鳴り
複数回は押せない。
...あの時....。
松之は、初めて出逢った時のあのモニター映像を思い出している。
もしあの時、このエレベータだったら......
フェイル・セーフ・ブザーが鳴って
1階ボタンを複数回押す事は出来なかったのだ。
新しいから、良いって訳でもないんだな。
松之は、妙な事に感じ入っている。
それがなければ、出逢う事も無かったのだけれど......。



